採用で注目される“GRIT(やり抜く力)”は、社員の努力だけで育つのか

こんにちは。高知で小規模事業者の労務をサポートしている、おはら社会保険労務士事務所の小原です。

最近、経営者の方から「うちの若い社員、少し壁にぶつかるとすぐ辞めてしまうんですよ」という悩みをよく聞きます。 そんなときに話題に上がるのが、“GRIT(グリット)”という言葉です。

これは「やり抜く力」や「粘り強さ」を意味する心理学の用語で、ビジネスの場でも重要だと言われています。 たしかに、困難があっても諦めずに努力できる人材は、どんな会社でも喉から手が出るほど欲しいはずです。 しかし、このGRITは個人の性格や気合だけでどうにかなるものなのでしょうか。

面接で“やり抜く力”を見抜くのは難しい

採用の面接で「困難を乗り越えた経験はありますか」と質問する会社は多いです。 過去の部活動やアルバイトの経験から、その人の粘り強さを測ろうとするのは自然なことです。 だから、一生懸命に頑張ったエピソードを聞くと「この人はGRITがある」と期待して採用を決めることになります。

ただ、実際に働き始めると、面接の印象とは裏腹にあっさりと退職してしまうケースが後を絶ちません。 つまり、別の場所で発揮できたやり抜く力が、自分の会社でもそのまま発揮されるとは限らないということです。

頑張り続けるためのエネルギーはどこから来るか

人が何かをやり抜くためには、情熱と目標が必要です。 自分が何のためにこの仕事をしているのか、この先どう成長できるのかが見えない状態では、どんなに忍耐力がある人でもエネルギーが切れてしまいます。

たとえば、入社したばかりの社員が「毎日同じ作業の繰り返しで、誰の役に立っているのかわからない」と感じていたらどうでしょう。 そこで「石の上にも三年だ」と精神論を伝えても、心には響きません。 大事なのは、本人の意思の強さに頼るのではなく、日々の業務に意味を感じられるような声かけを会社側がしていくことです。

やり抜く力を引き出す職場環境の作り方

では、具体的にどうすれば社員のやり抜く力を引き出せるのでしょうか。 まず最初にやるべきことは、社員が抱えている小さな悩みに耳を傾けることです。 「最近困っていることはない?」と定期的に声をかけるだけでも、社員は「自分を見てくれている」と安心します。

失敗したときにただ叱るのではなく、どうすれば次に活かせるかを一緒に考える姿勢も大切です。 労働基準法などの法律を守り、安心して働ける労働条件を整えることは大前提として必要です。 その土台の上に、失敗を恐れず挑戦できる空気が加わることで、初めて人は粘り強く頑張ることができます。

会社と社員が一緒に育っていくために

GRITは、持って生まれた才能ではなく、環境と関わり方次第で後からでも伸ばせる力です。 社員にだけやり抜く力を求めるのではなく、会社もまた、社員を育て抜くという覚悟を持つ必要があります。

私たちの事務所が掲げる「働く人を明るく元気に。それが、会社を元気にする」という理念も、まさにこの考え方に通じています。 まずは今日、最近入社した社員の顔を見て、ちょっとした雑談から始めてみてください。 そうした小さな対話の積み重ねが、やがて会社を支える強い力に変わっていくはずです。