こんにちは。高知で小規模事業者の労務をサポートしている、おはら社会保険労務士事務所の小原です。
前回は、採用や定着の軸となる「会社の理念の作り方」についてお話ししました。今回はその第2弾として、作った理念をどのように従業員へ伝えていけばいいのかをお伝えします。
経営者の方から「理念を作って壁に飾ったけれど、現場の意識が全く変わらない」というご相談を受けることがあります。社長が何日も悩んで紡ぎ出した言葉でも、ただ発表するだけでは従業員の心にはなかなか届きません。
せっかく作った「会社の軸」を、単なるスローガンで終わらせず、日々の仕事に活かしていくためには、伝え方に少しの工夫が必要です。
「朝礼で唱和する」だけでは浸透しない
理念を浸透させようと考えたとき、真っ先に思い浮かぶのが朝礼での唱和や理念カードの配布かもしれません。もちろん、言葉を知ってもらうという意味では一定の効果があります。
ですが、ただ決められた言葉を毎朝読むだけでは、どこか“やらされ感”が出てしまいます。現場の従業員からすれば、忙しい業務の中で「社長がまた何か新しいことを始めた」と冷めた目で見られてしまうことも少なくありません。
言葉そのものを暗記してもらうことが目的ではありません。大事なのは、その理念が日々の業務でどう活きるのかを実感してもらうことです。言葉だけを押し付けても、現場の行動は変わりません。
日々の「判断基準」として理念を使う
では、どうすれば理念が伝わるのでしょうか。一番効果的なのは、日々の業務で迷ったときの判断基準として理念を使うことです。
例えば、「お客様の笑顔を最優先する」という理念がある会社を想像してみてください。従業員が、マニュアル通りに対応するか、少し手間をかけてでもお客様の要望に応えるかで迷ったとします。そのときに「うちの理念に照らし合わせれば、ここは手間をかける場面だね」と一緒に確認するのです。
このように、実際の業務のなかで「だからこの行動をとるんだ」と紐づけて説明することで、理念は初めて生きた言葉になります。抽象的な言葉が、具体的な行動の指針へと変わっていく瞬間です。

理念に沿った行動を見つけて「評価」する
もう一つ重要なのが、従業員の行動を評価する仕組みです。評価というと、給与やボーナスの査定を思い浮かべるかもしれませんが、それだけではありません。
日々の声かけこそが、一番身近で強力な評価です。従業員が理念に沿った素晴らしい対応をしていたら、「今の対応、うちが大切にしている理念そのものだったよ。ありがとう」と、具体的に言葉にして伝えてみてください。
人は、自分の行動が認められると嬉しくなり、また同じように行動しようと思うものです。こうした日々の小さな「ありがとう」の積み重ねが、少しずつ職場の雰囲気を変え、理念を深く浸透させていきます。
一番見られているのは社長自身の「背中」
理念を伝えるために様々な工夫をお伝えしましたが、最後にもう一つだけお話しさせてください。従業員が一番よく見ているのは、壁に飾られた言葉ではなく、社長自身の背中です。
社長自らが理念に反するような行動をとってしまえば、どれだけ立派な言葉を並べても誰も信じてくれません。「働く人を明るく元気に。それが、会社を元気にする」という当事務所の理念も、私自身がまず実践できているかと、常に自問自答しています。
完璧である必要はありません。社長自身が理念に向かって真摯に取り組む姿勢を見せ続けることが、何よりのメッセージになります。まずは今日、従業員さんの理念に沿った行動を一つ見つけて、声をかけることから始めてみてください。伝え方で迷ったときは、いつでもお気軽にご相談くださいね。