こんにちは。高知で小規模事業者の労務をサポートしている、おはら社会保険労務士事務所の小原です。
最近、初めて従業員を雇い入れた経営者の方から「社員の態度や身だしなみについて、どこまで注意していいのか分からない」というご相談を受けることが増えてきました。仕事中のスマートフォンの私的利用や、お客様の前に出る際の服装など、経営者としては気になっても、はっきりとした決まりがないと指摘しづらいものです。
また、注意をしたことで関係がぎくしゃくしてしまい、職場の空気が悪くなるのも避けたいところですよね。こんなときに役立つのが、会社のルールブックの一部である「服務規程」です。
今回は、この服務規程がなぜ必要なのか、そしてどうやって作っていけばいいのかをお話しします。
注意できないのは明確な「基準」がないから
日々の業務の中で、「それは社会人としてどうなのか」と感じる社員の行動を目にすることがあるかもしれません。接客業でお客様がいない間にスマートフォンで動画を見ている、あるいは挨拶の声が小さすぎるといった事例はよく耳にします。
しかし、それを直接注意すると「そんなルールは聞いていません」「他の人もやっています」と反発されてしまうことがあります。これは、社員が意図的に手を抜いているのではなく、会社としての明確な「基準」が存在しないために起こるすれ違いです。
経営者が長年の経験で培ってきた“当たり前”の感覚は、言葉にして明文化しない限り、新しく入ってきた社員には伝わりません。だからこそ、やってはいけないこと、守るべきことを会社のルールとして共有する必要があります。
服務規程は就業規則の大切な一部
ルールを文字にしたものが就業規則であり、その中で社員の働く姿勢や職場の規律について定めた部分を「服務規程」と呼びます。
労働基準法では、常時10人以上の労働者を雇う場合には就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません。これは法律上の義務です。しかし、10人未満の事業所であっても、トラブルを未然に防ぐために書面で作成しておくことを強くお勧めします。
服務規程があることで、もし問題行動を起こす社員がいた場合でも、「当社の規程第〇条に違反している」と客観的な根拠をもって指導できます。つまり、経営者の感情やその日の気分で怒っているのではなく、会社としての方針に則って指導しているのだと冷静に伝えられるのです。

最初は「これだけは」の3つから始める
いざ服務規程を作ろうとすると、インターネットにある分厚いひな形をそのまま使いたくなるかもしれません。ですが、自社の実態に合わないルールを定めても、誰も守れない飾りの文章になってしまいます。
そこで、まずは自社で「これだけは絶対に守ってほしい」というルールを3つだけ書き出してみてください。たとえば「遅刻や欠勤をするときは必ず始業時間前に電話で連絡する」「お客様や取引先には明るく挨拶をする」「業務上知り得た情報は絶対にSNS等に書き込まない」といった具合です。
業種や職場の雰囲気に合わせて、経営者として一番大切にしたいことから言葉にしていきます。それらが少しずつ集まっていくことで、会社独自の血の通った服務規程へと育っていきます。
働く人を守るためのルール作り
服務規程というと、会社が社員を縛り付ける厳しいものというイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、本当の目的は違います。誰がみても公平なルールがあることで、真面目に頑張っている社員が損をしない環境を作ることができるのです。働く人が安心して業務に集中できる環境は、必ず会社の元気につながります。
まずは今日、社長自身のノートの端にでも構いません。「うちの会社で大切にしたいルール」を書き出すところから始めてみてください。それが、より良い職場づくりの第一歩になります。