こんにちは。高知で小規模事業者の労務をサポートしている、おはら社会保険労務士事務所の小原です。
高知の小規模事業者の社長様から、「新しく人を雇いたいけれど、給与はいくらに設定すればいいだろうか」というご相談をよくいただきます。ハローワークの求人票を見ながら、周りの会社の金額を参考に探り探り決めている方も多いのではないでしょうか。
創業期や小規模な会社ほど、社長の感覚や前職の給料をそのまま参考に決めてしまいがちです。しかし、明確な基準がないまま給与を決めてしまうと、後から入社した社員との金額のバランスが崩れたり、昇給のタイミングで頭を悩ませたりすることになります。
給与は、働く人にとって生活の基盤であり、自分の仕事がどう評価されているかを感じる大切な指標です。だからこそ、会社と社員の双方にとって納得のいく決め方の土台を作っておくことが欠かせません。
感覚だけで給料を決めると起きる行き違い
事業を始めたばかりの頃は、採用したい一心で「前の会社でこれくらいもらっていたから」と相場より高めの給与を提示してしまうことがあります。ところが、会社の業績が厳しい時期に入ったとき、その高い給与を維持し続けるのが大きな負担になってしまうケースは少なくありません。
逆に、経営の不安から低すぎる給与を設定してしまうと、求人を出しても応募が来なかったり、入社してもすぐに辞めてしまったりする原因になります。法的な観点からも、都道府県ごとに定められている最低賃金は必ずクリアしなければなりません。最低賃金も毎年改定されますので、下回ることがないよう正確に確認することが義務付けられています。
また、既存の社員より後から入った未経験者のほうが給料が高いといった不公平感が生まれると、職場の雰囲気にも悪影響を与えます。社長が「これくらいが妥当だろう」と頭の中だけで決めた金額は、現場に対して説明がつかなくなりやすいのです。
基本給と各種手当の役割を明確にする
給与を整理する第一歩として、まずは「基本給」と「手当」の役割を分けて考えることから始めてみてください。一括りで「月給〇〇万円」と決めるのではなく、何に対して支払うお金なのかの内訳を明確にします。
基本給は、その人の年齢や経験、担当する業務の難易度や役割に応じて支払う給与のベースとなる部分です。一方、手当は「通勤にかかる費用」や「特定の資格を持っていることに対する評価」「役職に伴う責任」など、特定の条件に応じて支給するお金です。
このように内訳を分けておくと、最低賃金のチェックや残業代の計算を行う際にも間違いを防ぐことができます。法律上、最低賃金の計算には通勤手当や家族手当、残業手当などは含めてはいけないことになっています。内訳を明確にしておくことで、法令順守の面でも安心して運用できるようになります。

自社なりの決定基準を言葉にして整理する
では、具体的に自社でいくらの基本給を設定すればよいのでしょうか。大企業のような複雑な評価制度をいきなり作る必要はありません。大事なのは、自社が「何に対して給料を払うのか」という基準を言語化することです。
例えば、「未経験で一人立ちするまではこの金額」「現場の作業をひとりで任せられるようになったらこの金額」「後輩の指導ができるようになったら手当をプラス」というように、成長の段階を具体的にイメージしてみます。紙に数行書き出すだけでも、給与の枠組みが見えてきます。
このように基準を形にしておくと、採用の際にも「うちの会社ではこういう基準で給料を決めています」と求職者に自信を持って説明できます。面接の段階で給与の理由を明確に伝えられる会社は、応募者にとっても信頼感が大きく高まります。
明確な基準が働く人のやりがいと会社を元気にする
給与の決め方に正解は一つではありませんが、大事なのは「なぜこの金額なのか」を社長自身が根拠を持って説明できることです。根拠がある給料は、社員にとっても「自分の頑張りがどこに繋がるのか」という目標になります。
「働く人を明るく元気に。それが、会社を元気にする」という言葉の通り、自分の仕事と給料の関係が納得できている職場では、社員が安心して業務に集中できるようになります。まずは今の給料の内訳と、どんな基準で決めているかをノートに書き出してみることから始めてみてください。小さく具体的に現状を整理することが、居心地の良い職場づくりの最初の一歩になります。