こんにちは。高知で小規模事業者の労務をサポートしている、おはら社会保険労務士事務所の小原です。
先日、経営者の方から「退職が決まったスタッフから、残っている有給休暇を全部消化して辞めたいと言われた。引き継ぎも終わっていないのに、どうすればいいだろう」というご相談をいただきました。
初めて人を雇った経営者の方や、少人数で現場を回している会社にとって、急にスタッフが長期間休むことになると現場のやりくりが本当に大変になりますよね。引き継ぎはどうなるのか、他のお客様に迷惑がかからないか、頭を悩ませる気持ちは本当によく分かります。
今回は、退職時の有給消化について、法律のルールと、会社とスタッフの双方が納得して円満に送り出すための具体的な進め方をお伝えします。
退職時の有給休暇は会社が拒否できないという原則
まず法律上の結論からお伝えすると、従業員から退職時の有給消化を申請された場合、会社はそれを拒否することはできません。
普段であれば、会社には休む時期を別の日にずらしてもらう “時季変更権” という権利が認められています。しかし、退職日が決まっている場合は、変更する日がもう残されていないため、この権利を使うことは不可能です。
そのため、スタッフに残っている有給休暇はすべて使わせなければなりません。ここは法律で明確に定められている義務ですので、会社としてしっかりと受け入れる必要があります。
現場の引き継ぎトラブルを防ぐための具体的な対策
そうは言っても、引き継ぎをせずにお休みに入られては、残された他のスタッフの負担が大きくなってしまいます。
そこで、退職届を受け取ったその日に、まずは残っている有給の日数を正しく計算して本人と共有してみてください。その上で、退職日までの出勤できる日数と、どうしても必要な引き継ぎ業務のスケジュールを一緒に書き出してみるのがおすすめです。
どうしても引き継ぎが間に合わない場合に限り、有給休暇を会社が買い取る形で解決する方法もあります。ただし、有給の買い取りは法律で義務付けられているわけではなく、あくまで双方が合意した上での例外的な対応となります。
日頃からのルール作りと有給の見える化が会社を守る
こうした退職時のバタバタを防ぐために一番大切なのは、日頃からの備えです。
就業規則の中に “退職を希望する場合は1ヶ月以上前に申し出ること” や “退職時の引き継ぎスケジュールを計画的に進めること” といったルールを明記しておくと、お互いの共通認識になります。また、普段からスタッフが今どれくらい有給を持っているのかを、会社側も本人も把握できる状態を作っておくことが大切です。
働く人が安心して有給を取れる環境は、日々の活力を生み出し、結果として会社を元気にすることに繋がります。まずは、現在のスタッフの有給残日数を一覧で確認することから始めてみてください。

お互いが笑顔で次のスタートを切るための対話を
退職の場面は、その会社での最後の印象を決める大切な時間です。
法律だからと諦めるのではなく、これまでの感謝を伝えつつ、「ここまでは引き継ぎをお願いしたい」と誠意を持って対話することが、トラブルを防ぐ一番の近道になります。お互いが気持ちよく次のステップへ進めるよう、まずは丁寧なコミュニケーションを心がけてみてくださいね。
もし「法律の解釈が合っているか不安」「就業規則を見直したい」と感じたら、いつでもお気軽におはら社労士事務所までご相談ください。