毎年やってくる「労働保険の年度更新」とは?初めての経営者でも迷わない準備のコツ

こんにちは。高知で小規模事業者の労務をサポートしている、おはら社会保険労務士事務所の小原です。

初夏を迎えるこの時期、経営者の皆様にとっては、ポストに届く大きな茶封筒や緑色の封筒が気になり始める季節かもしれません。中を開けると「労働保険 年度更新申告書」という難しそうな書類が入っています。

初めて人を雇ったばかりの社長さんから、「これ、どうすればいいの?」というご相談をよくいただきます。日々の業務でお忙しい中、見慣れない数字や計算式が並んだ書類を見ると、少し気が重くなってしまうのも無理はありません。

この手続きは、会社で働くスタッフと会社そのものを守るためにとても重要なものです。今回は、この「年度更新」がどんな仕組みなのか、何から手を付ければ良いのかを分かりやすくお伝えします。

労働保険の年度更新は「1年間の保険料の精算」

労働保険とは、スタッフが仕事中や通勤中にケガをしたときに守ってくれる “労災保険” と、退職時をサポートする “雇用保険” を合わせたものです。スタッフを1人でも雇っていれば、必ず加入しなければなりません。

年度更新を一言でいうと、保険料の正しい精算と先払いです。労働保険料は、毎年4月から翌年3月までの1年間に支払った給料の合計をもとに計算します。ただ、年度の初めには最終的な給料の総額は分かりません。

だからこそ、最初に「これくらいになりそうです」と見込みで前払いしておき、1年が終わった後に実際の給料で計算し直して差額を精算します。この精算と、新しい1年分の前払いを同時に行うのが、年度更新という手続きの正体です。

法律で決まっている申告の期限とルール

この手続きには、法律で定められた厳密なスケジュールがあります。毎年6月1日から7月10日までの間に、前年度の確定した保険料の申告と、今年度の見込み保険料の申告、そして実際の納付をすべて済ませなければなりません。

もしこの期間を過ぎてしまうと、国から督促を受けたり、追徴金というペナルティが発生したりすることがあります。小規模な事業所であっても免除されることはなく、人を雇っているすべての会社に課された義務です。

毎年この時期は決まってやってくるものだとカレンダーに登録しておき、早めに対応を始めることが、余計なトラブルを防ぐ一番の近道です。

忙しい社長がまず最初にやるべきこと

どこから手をつければいいか迷ったときは、まず「賃金台帳」を手元に用意することから始めてみてください。賃金台帳とは、スタッフ一人ひとりに毎月いくらの給料を支払ったかが記録されている書類のことです。

前年の4月から今年の3月までに支払った給料を、スタッフ全員分、月ごとに集計していきます。このとき、労災保険の対象になる人と、雇用保険の対象になる人で、集計するメンバーが異なる場合があるので注意が必要です。

例えば、働く時間が短いために雇用保険には入っていなくても、労災保険の対象にはパートやアルバイト全員が含まれます。誰にいくら支払ったかを一覧表として手元に揃えることが、計算をスムーズに進めるコツです。

働く人と会社を元気に保つための土台

労働保険の年度更新は、単なる事務作業に思えるかもしれません。しかし私たちの事務所では、「働く人を明るく元気に。それが、会社を元気にする」という思いを大切にしています。スタッフが安心して働けるのは、万が一のときに守ってくれる労働保険という土台があるからです。

正しい手続きを行うことはスタッフへの思いやりであり、経営者様自身が安心して事業に専念するためのセーフティネットにもなります。もし計算が複雑で分からないときや、日々の業務で手が回らないときは、一人で抱え込まずに私たちのような身近な専門家にいつでも声をかけてみてください。一つひとつの数字を一緒に整理しながら、安心して夏を迎えられるように準備を進めていきましょう。