こんにちは。高知で小規模事業者の労務をサポートしている、おはら社会保険労務士事務所の小原です。
経営者の方から、「日曜日に急な仕事が入って従業員に出勤してもらったから、代わりに今週の平日に休んでもらいます」というお話をよくお聞きします。
従業員をしっかり休ませようとする素晴らしいお気遣いです。しかし、ここで一つ気をつけていただきたいことがあります。それは、休む日を「いつ決めたか」によって、法律上の扱いがまったく変わってしまうということです。
この違いが、いわゆる「振休(振替休日)」と「代休」の違いです。ここを混同したまま処理してしまうと、知らないうちに賃金の未払いが発生してしまうことがあります。今回は、初めて人を雇う方にも分かりやすく、この2つの違いと正しい対応をお伝えします。
事前に休日を交換するのが「振休」
振休(振替休日)とは、休日出勤をしてもらう「前」に、出勤日と休みの日をチェンジしておくことです。
たとえば、金曜日の時点で「今度の日曜日は忙しくなるから出勤してほしい。その代わり、来週の水曜日を休みにするね」と約束するようなケースです。このように事前に日を交換しておけば、日曜日は法律上「最初から働く予定だった日」に変わります。
休日に働かせたわけではなくなるため、会社は休日出勤に対する割増賃金(いつもより余分に払うお給料)を支払う必要がありません。ただし、週の労働時間が40時間を超える場合は別の割増賃金が発生することもあるので、出勤シフトの管理はしっかりと行う必要があります。
事後になって休みを与えるのが「代休」
代休とは、休日出勤をした「後」に、代わりの休みの日を決めることです。
日曜日に急なトラブル対応で出勤してもらい、月曜日の朝になってから「昨日は急な出勤ありがとう。代わりに水曜日を休みにしようか」と伝えるようなケースがこれに当たります。
この場合、日曜日はあくまで「休日に働いた」という事実がそのまま残ります。つまり、会社は法律で定められた休日労働の割増賃金(3割5分増しなど)を必ず支払わなければなりません。後から別の日に休ませたとしても、休日労働をしたことへの「割増分」はチャラにはならないのです。これを忘れて1対1の休み交換として処理してしまうと、未払い賃金となってしまうので注意が必要です。

現場の信頼関係を守るための考え方
実務の現場では、経営者側が「別の日に休ませているから問題ないだろう」と思っていても、従業員側は「急に休みを潰して働いたのに、手当が少しもついていない」と不満を抱えていることがよくあります。
従業員にとって、休日の予定を急に変更して出勤することは大きな負担です。同じ1日を休むにしても、前もって予定が組める振休と、事後対応になる代休とでは、心身の休まり方も違います。
だからこそ、急な出勤をお願いして「代休」になった場合は、法律通りにしっかりと割増賃金を支払うことが大切です。その誠実な姿勢が「会社は自分の頑張りをちゃんと見てくれている」という安心感につながります。
休日出勤をお願いする前にまず確認すること
忙しい経営者の方に、まず実践していただきたい小さなステップが1つあります。それは、従業員に休日出勤をお願いするその瞬間に、「いま、代わりの休みの日を指定できるか?」と立ち止まって考えることです。
その場で指定できるなら、事前に伝えて「振休」にします。予定が読めず後から決めるしかないなら、「代休」として割増賃金を払う心づもりをしておきます。この入り口の判断を意識するだけで、給与計算のミスや後々の労務トラブルは大きく減らすことができます。
働く人を明るく元気に。それが、会社を元気にする。日々の忙しさの中でも、こうした小さなルールの積み重ねが、従業員が安心して働ける良い職場をつくっていきます。ぜひ次回のシフト作成時から、意識して確認してみてください。