こんにちは。高知で小規模事業者の労務をサポートしている、おはら社会保険労務士事務所の小原です。
毎月の給与計算の時期になると、デスクの上でタイムカードと電卓を前にして頭を抱えている経営者の方も多いのではないでしょうか。特に残業代の計算は、法律のルールが細かくてどこから手をつければいいのか迷ってしまいますよね。
「これまでのやり方でずっと計算してきたけれど、本当にこれで合っているのだろうか」という不安の声を、経営者の方からもよく伺います。悪気はなくても、もし計算が間違っていれば、後に従業員との大きなトラブルになってしまうリスクがあります。
私たちの事務所では「働く人を明るく元気に。それが、会社を元気にする」という思いを大切にしています。従業員が安心して働ける環境を作るためには、働いた分の残業代を正しく計算して支払うことがすべての土台になります。
大事なのは、法律の基本を一つずつ整理して自社の計算に当てはめていくことです。今回は、給与計算の日に慌てないために、絶対に間違えてはいけない残業代計算の基本を分かりやすくお伝えします。

残業代の基になる金額から「除外できる手当」は決まっている
残業代を計算する第一歩は、その従業員の「1時間あたりの賃金」を正しく出すことです。月給制の場合は、基本給や各種手当を1ヶ月の平均所定労働時間で割って計算します。ここで多くの会社が、手当の扱いで間違いをしてしまいます。
法律上、残業代の計算の基から引いていい手当は厳格に決まっています。具体的には、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、それに臨時の手当や1ヶ月を超える期間ごとに支払われる手当だけです。これら以外のものは、すべて残業代の計算に含めなければなりません。
例えば「役職手当」や「職務手当」「皆勤手当」などは、名目が手当であっても法律上は基本給と同じ扱いになります。これらの手当を除外して基本給だけで残業代を計算することは法律違反になりますので、自社の支給項目を必ず確認しなければなりません。
労働の時間帯や曜日に合わせた「割増率」を適用する
1時間あたりの金額が計算できたら、次は法律で定められた「割増率」を掛け合わせます。法定労働時間である「1日8時間、または週40時間」を超えて働いた時間に対しては、通常の25パーセント増し、つまり1.25を掛けた金額を支払わなければなりません。
この割増率は、従業員が働いた時間帯や曜日によって高くなる仕組みになっています。例えば、夜の22時から翌朝5時までの間に仕事をしてもらった場合は、深夜労働の割増としてさらに25パーセントが加算され、合計で1.5倍の支給が必要です。
また、法律で定められた休日に出勤してもらった場合は、休日労働として1.35倍の計算になります。だから、タイムカードを見て「いつ、どの区分の残業が発生しているか」を正確に区別して集計することが必要です。
日々の労働時間は「1分単位」でそのまま集計する
計算の基になる労働時間は、日々の記録通りに「1分単位」で集計するのが法律の原則です。「15分未満の端数は切り捨てる」といった会社が独自に作ったルールで処理することは認められていません。
日々の10分や15分の切り捨てを積み重ねていくと、知らないうちに従業員の労働時間を過小評価することになり、未払い残業代の請求を受ける原因になります。朝の着替えや準備の時間、終業後の片付けの時間も、会社の指示であれば労働時間に含まれるため注意が必要です。
ただし、1ヶ月の総残業時間を合計した結果、最後の最後に1時間未満の端数が出た場合だけは例外があります。30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることが認められていますので、日々の集計ルールと混同しないように整理しましょう。
まずは今月の給与明細にある「手当の項目」を1つ確認する
残業代の正しい計算は、経営者自身の不安をなくすだけでなく、従業員との信頼関係をがっちり守るためにも欠かせません。自分が頑張って働いた時間が1分単位で正しく評価されていると実感できれば、職場の雰囲気も自然と明るく元気になります。
忙しい業務の中で一気にすべてを見直すのは大変ですので、まずは今月の給与計算の際に、自社の「役職手当」や「職務手当」が残業代の計算に含まれているかを1つだけ確認してみてください。ここから確認すると、自社の現状を無理なく把握できて整理が早いです。
最初の一歩を踏み出すことで、将来の不要なトラブルを防ぎ、誰もが安心して長く働ける会社へと近づいていきます。大切な従業員と会社をしっかり守るために、できるところから少しずつ見直していきましょう。